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2008年に読んだ小説ベスト10!<第10位&第9位> [小説]

通勤がバス+電車+バス=計1時間40分になってから、それまであまり読んだことがなかった「小説」を読むようになり、「なんで、若いうちにこの世界に気づかなかったんだ・・」と後悔しかりなのであります。
昨年末にやっておきたかったのですが、かなわなかったので、ちょっとタイミングはずれましたが・・
「2008年に読んだ小説ベスト10」いきます。

ジェネラルルージュ.jpg
<第10位> 「ジェネラルルージュの凱旋」 海堂 尊
・映画にもなった「チームバチスタの栄光」の第3弾で、大学病院を舞台にした医療ミステリー。白鳥という厚労省の超切れ者「変人」が、強烈なキャラクターとして登場。
・現役の医師でもある著者が書いているだけあって、内容はとてもリアル。医療機関に事務職ながら勤務している私としては、その点で親近感をおぼえるのと、ストーリー展開のおもしろさ、奇抜さなどでシリーズを読んできました。
・中でも、この作品が一番好きでした。シリーズの中では、一番、現実感があったかな。それに、あまり「血」が出てこないし・・・。著者が医師であるせいか、他の作品では、血の臭いがしそうな場面が多々あるのですが、「ジェネラルルージュ・・」は大丈夫。
・やや派手な文章使いが気になるものの、面白かった1冊です。

犯人に告ぐ.jpg
<第9位> 「犯人に告ぐ」 雫井修介
・豊川悦司主演で映画にもなった作品。テレビで犯人に呼びかけながら捜査を進めていく、劇場型捜査を描いたストーリー。
・とにかく、字を追って、ページをめくるのも、もどかしいくらい、「先へ、先へ」と急かせるように、物語の先が気になってしまう小説でした。
・特に、心に何かが残るという小説ではないけれど、単純に楽しめるエンターテインメントとしてはお勧めです。
・この後、著者の「火の粉」も読みました。これも「先へ、先へ」と急かされるタイプでしたが、「ちょっと内容が怖すぎ・・」でランク外。


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「流星ワゴン」 重松 清 [小説]

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先日の出張+アルファの時間で読んだのが、この本。
あらすじは・・・
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。
僕らは、友達になれるだろうか?
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。 (amazonより)

で、とっても感動した。
誰でも、やり直せるものなら、あの時に帰ってやり直したいと思う、「あの時」が一つや二つ(もっとかな)はあると思う。でも、主人公が連れて行かれるのは「どうしてここなの?」と本人も意外な「あの時」。そして、あの時、自分では気づけなかった、見逃してしまった、周りの大切な人たちの意外な一面を見せられて、次第になぜそこに連れて行かれたのかが徐々に分かってくるというもの。

この物語の大切な軸をなしているのが「父子の葛藤」。自分と父親、そして自分と息子。そして、その葛藤を氷解させる鍵となるのが「理解」、相手の心が分かり、受け入れ、許せるということ、それがこの物語のテーマのように感じた。

自分は一番身近にいる大切な人のことを、わかっているつもりで、ほんとは理解できていないのではないか?と問いかけられることがスタートになっている。そして、簡単に「理解できた」という着地点に持って行かないところが、この作家の良いところ。現実はそんなに簡単なことではない。理解できるようになるために近くにいるのだ、一緒に歩いているのだ、家族として生まれているのだ、その過程こそが面白いのだということなのではないか。

我が家族も、数十年後、みんなあの世に帰った時に、家族座談会をやったら、きっと「そんなつもりじゃなかったのに」とか「もうちょっと私の立場に立って考えてくれてもよかったんじゃないの!」とか、さんざん言われそうな気がするなあ。

きわめてリアリスティックな視点と、ファンタジーが同居している作品だ。前回読んだ「その日のまえに」で筆者のファンになり、この「流星ワゴン」で益々惚れ込んだ。今、机の上には次の「ビタミンF」が控えている。

傑作!!「テンペスト」(池上永一) [小説]

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先日、先輩のブログで絶賛されていた「テンペスト」(池上永一)をどれどれ・・と読んだ。
先輩の言うとおり、傑作だと思った。

物語は・・・
美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国は悩んでいた。少女まづるは憧れの王府を救おうと宦官と偽り行政官になって大活躍。しかし待ち受けていたのは島流しの刑だった――。見せ場満載、桁外れの面白さ!
黄昏の美しい王国にペリー来航。近代化の波に立ち向かう宦官兼側室の真鶴。しかし破天荒な一人二役劇は突然幕を閉じる―。時代の変わり目を嵐(テンペスト)となって生き抜いた王宮人の苛烈な愛と涙の物語。
といった感じ。

何というか、琉球王朝絵巻を見た、という感じだろうか、これまでに味わったことのない読書感に誘われた。
本を開き、一行の文字を追った途端、琉球の色彩や、風や、温度や、薫りの中に誘われた。

読後の今も、登場人物たちが、確かに自分の心の中で生き生きと生き続けている感じも初めてだ。

この先、どうなるんだろうとはやる気持ちを抑えながら、読み続けたが、読了してみると
「読み終わってしまった・・」という、寂寥感が心に残る。

うん、やっぱり、この小説は希有なる傑作だ!!

重松清 「その日のまえに」 [小説]

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昨日、読了。
数年前に発刊されて、多くの読者を得、そして、もうすぐ映画にもなるらしい。

この本のテーマは、「死」。人間が「死」を突きつけられたとき、どう受け止め、どう生きていくのか・・・。身近にいる家族たちはどうなのか。誰もが避けて通れない問題を、丁寧な日常の描写の中で取り扱っている。

登場人物たちが、自分と近い年齢であり、家族構成も近かったりで、だぶってしまったからなのか・・
自分自身、数年前の健康診断で、「肺に影があるので、精密検査を」と言われて、悶々とした日々を送った経験があるからなのか・・・
先日、先輩のブログで、奥さんが亡くなったときの、悲しみや喪失感を読んで、目頭を熱くしたからなのか・・・

共感と共に、あとを引く読後感の中にいる。

僕は「人間は永遠の生命を持って、転生輪廻しながら修行をしている旅人」という人生観を持っているので、死というものがこの世の卒業で、その後も生き続けると「頭」では、分かっているつもり。
でも、数年前の精密検査の後のように、いざ、自分自身の前に「死」というものがおぼろげにでも、その姿をあらわしたときに、また、愛する家族に、「死」が迫っていることを知ったときに、この小説の登場人物たちと同じように、僕は、苦しみ、ぼろぼろに泣いてしまうのだろうと思う。それは、人間であるということの証だし、そして、それをどう受け止めて、それ以降を生きていくのかというところに、愛すべき、いじらしいまでの「人間らしさ」があるのだと思った。

そして、この小説でもうひとつ感じたのは、「日常」というものの力の大きさ。
これで自分の人生は終わりだ・・・と思えるような悲しみでさえも、押し流し、癒していく「日常」という力。
その力によって、愛する人を忘れてしまう自分を嫌悪したり、でも、そこには生きている自分が確かにいて・・・

いろいろなことを考えた1冊だった。

ミステリー小説 [小説]

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これも隣の公園に咲いていた小さな花。
遠目にも一番目立つはっきりとした色で「私はここです!」と言っている気がした。

さて、片道1時間40分の電車&バス通勤を初めて、早1年半が経とうとしている。
往路は、ひたすら寝ることに徹しているので、あっという間に着いてしまうが、
帰りの時間をどうしようと、これまで読んだことのないミステリー小説を買ってみた。
そして、はまってしまった。

そもそも文学部出身のくせに、小説を読むという習慣がなかった私。
ましてや「ミステリー小説なんぞ」という思いもあって、手に取ることがなかった。

でも、良質なミステリー小説もあるんだと知ったわけです。
最近読んだ中では、これが一番だったかなあ。

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宮部みゆきの「火車」

あらかたのストーリーは・・・
内容(「BOOK」データベースより)
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
という感じ。

まったく影も形もないところから、徐々に自分の目の前に、その女性が姿を現してくる。透明人間が、魔法が切れて、徐々に見えてくる感じだろうか。本間という元刑事が、正義感でも憎しみでもなく、限りない「人間への関心、探求心」をエネルギーに行動していくところが、この小説に深みを持たせている。そして、読み手の自分も、その強い関心を共有するようになっていた。

小説家ってすごいな!というのが読後の感想。

宮部みゆき作品は、この前に「誰か」を読んだが、そのテンポのゆっくりさに、途中何度も頓挫しそうになって読み終わり、読後感もいまいちだったので、「火車」を読むかどうか迷ったのだが、これは、正解!だった。

おすすめの1冊。


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